-東村山の住まい-
敷地は低層の住宅地帯にあり、遠くを望めば狭山丘陵が連なる景色を一望できる穏やかな環境である。 ご主人の両親と共に暮らした古くからの住居を離れ、夫婦と3人の子供で新しい土地での家づくりがはじまった。
420㎡のゆとりある土地面積のおかげで、はじめから平屋で十分に計画を進めることが出来た。 かつて2世帯で暮らしていた住まいは、玄関・勝手口・縁側を介して外部と繋がりを持ち、それぞれの場所へとふさわしく訪れる人との頻繁な交流があったことが印象的だった。
改まった来客は玄関、近所の人は縁側に集まってしばしおしゃべり、日々の生活の動線は主に勝手口…
それぞれに応じて多様な内と外の関係が織りなす、風通しの良い豊かな生活を、新たな家族の生活にも馴染ませていきたいと考えた。
T字型に構成された平屋は、全面道路側を切妻屋根の家族が集まる場所とし、敷地の奥には片流れ屋根のそれぞれの個室が 連なるよう計画した。屋根形状による天井高さを活かし、個室を横断するようにロフトを設けることで3人の子供の部屋を緩やかに繋げる仕組みを提案した。
また全ての部屋には必ず掃出しの開口部を設け、その位置や敷地形状に応じて外部との関係が多様になるよう計画した。 リビングには縁側のように腰掛けられる大きな開口、主寝室には洗濯物が干せるサービスバルコニーと繋がる開口。子供部屋 それぞれからは軒下の土間に繋がる開口があり、靴や植木鉢もそれぞれの部屋に近接して置けるようにした。
生活に豊かさを生む内外の関係は、それと同時にどの部屋からも出入りが出来ることを可能にする。 それは家族それぞれの生活動線を縛ることなく自由に振る舞えることに繋がり、そんな一人ひとりにとっても拠り所として受け容れる場所であることが、 かつての住まいと共通する魅力なのではないだろうかと考える。 玄関・勝手口・縁側という形式的な繋がりを、個々の生活に寄り添うような内と外との関係に置き換えることで、これまでの 暮らしの中の懐かしい記憶と共に、新たな日々も連続して描いていってくれることを願っている。